同研究を行ったものである。この国際共同研究には、東京工業大学(以下TIT)、電気通信大学(以下UEC)およびOhio State University(以下OSU)の研究者も参加しており、高速で安定な歩容の設計、滑らかな足先連動軌跡の設計、ロボットダイナミクスのための能率のよいアルゴリズムの作成、不整地歩行のための歩容の設計、海流のロボットおよびケーブルに与える影響、3次元グラフィックシミュレーション等について研究を行った。Fig-1.に示すAQUAROBOT2号機は水中の凹凸面を歩行できる唯一のロボットであり、港湾工事への実用という目的の他に本プロジェクトの成果はロボット学の進展にとっても貴重なものと言えよう。また、日米両国政府によって国際共同研究としてそれぞれ援助されているという点が本プロジェクトのもう一つの特徴である。実質的な研究協力は1992年に開始され、1995年まで3年間行われた。本文では、共同研究プロジェクトの概要を紹介し、現時点までの成果の中でも、特に高機能の歩容設計アルゴリズムと実験結果を中心として述べる。
2.国際共同研究の実施状況
この国際共同研究は、1989年に0hioState Universi-ty(以下OSU)においてInternatonal Conference on Ad-vanced Roboticsが開催された際に、当時、港湾技術研究所でAQUAROBOTの開発を担当していた秋園純一とRobert McGheeが出会ったことから始まった。1991年に両国は日米科学技術協力協定に合意し、これに基づき実質的な研究活動が開始した。相互訪問は、米国から日本へは8回、日本から米国へは7回実施されている。この中には、具体的な研究活動を行うための長期訪問として、鈴木健治が1年間、米田完が2ヶ月間、白岩茂樹(PHRI)が1ヶ月間、それぞれNPSに滞在した。
米国側の研究は、National Science Foundation(以下NSF)が、”Simulation and Control of Autonomous Un-derwater Walking Robots”という題目で、1992年2月より3年間研究援助した。日本側は運輸省の経常研究費と1993年度の科学技術庁の科学技術振興調整費「港湾工事における水中調査ロボットの高速化技術」により行った。この国際共同研究では、日米で研究目的の設定が異なっている。NSFは純科学研究を援助する機関であるから、成功することが確実な計画を援助することはない。従って、その計画書においても、”このプロジェクトは成功するかどうかわからないような難しい問題を解こうと試みるものである”と述べている一方、PHRIのプロジェクトにおいては、運輸省の実際の業務を遂行するために水中歩行ロボットを開発し、実用化することを目標としている。従って、双方の目的には大きな隔たりがあるように見えるが、米国側は日本側のAQUAROBOTを対象としてより高度な制御理論の研究を行うこと、日本側はそれらの成果を基にAQUAROBOTに応用可能なものを実時間制御ソフトウェアとして導入し、AQUAROBOTを高性能化することを目的としており、最終的にAQUAROBOTを高性能な歩行ロボットとすることで一致している。